
「先輩や上司がとてもきついんです。すごく悩んでるんですけど、これってパワハラになりますか?利用者さんが好きなので辞めたくないんですけど、対処する方法はあるでしょうか」
「なるほど。先輩や上司からの言動によって精神的にまいってるんですね。パワハラには種類があります。パワハラに該当するかどうか、具体的な種類や内容、対処方法について見ていきましょう」

こんな疑問を解決します
この記事の内容
介護現場でどのようなパワハラが起こるのか、また、実際にパワハラに悩まされた場合の対処方法について書いています
こんにちは、せいじです。介護業界に20年以上従事し、複数の施設で施設長を経験しています。現在は、介護コンサルタントとして主に離職防止のノウハウを事業所や施設を回って提供しています。
さて、介護の現場ではいじめが多い、という話しを耳にされたことがあるかもしれません。
実際に、介護職の退職理由第1位は、ずっと職員同士の人間関係のトラブルになっています。
では、このトラブルがパワハラにあたるかどうか、といった点ではどうでしょうか。
パワハラになるには、一定の条件に当てはまるかどうかがポイントとなります。
今回は、パワハラの条件、そして、実際に自分が受けているのがパワハラかどうかを知ってもらうために、介護現場で起こるパワハラの具体例、最後に、パワハラへの対処方法について解説します。
パワーハラスメントとは?

では、まずパワハラとはどのようなものなのか、その定義や内容について見ていきましょう。
パワーハラスメントの定義
厚生労働省が、パワーハラスメントの定義を次の3つの要素を全て満たすものとしています。
パワハラの定義
- 優越的な関係を背景とした言動
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
- 労働者の就業環境が害される
「優越的な関係を背景とした」というのは、次のようなものを指します。
優越的な関係
- 職務上の地位が上位の者による言動
- 同僚又は、部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの
- 同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの
パワハラとは、上司から部下、先輩から後輩へ行われる行為と思いがちですが、状況によっては部下から上司への行為がパワハラに当たることもあります。
そして「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」としては、次のようなことがあげられます。
パワハラに当たる言動
- 業務上明らかに必要性のない言動
- 業務の目的を大きく逸脱した言動
- 業務を遂行するための手段として不適当な言動
- 当該行為の回数 、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動
たとえば、部下がミスをして、それに対する指導できつくなったとしても、パワハラになる可能性は低いです。
しかし、指導する内容に容姿が関係ないのに容姿のことを貶すなど、明らかに関係のないことで不快な発言をされるのはパワハラになります。
パワーハラスメントの内容
つぎに、パワハラに当たる内容について見ていきましょう。
パワハラに当たるのは、次のような行為です。
パワハラに当たる行為
- 身体的な攻撃
- 精神的な攻撃
- 人間関係からの切り離し
- 過大な要求
- 過小な要求
- 個の侵害
中身を説明しておきましょう。
身体的な攻撃
上司や先輩から暴力を受ける。物を投げつけられる。
精神的な攻撃
上司や先輩から、人格を否定されるような発言をされる。
人間関係からの切り離し
上司や先輩の意に沿わないと、仕事を外されたり、隔離されたりして、他の社員との関わりを切られてしまう。
過大な要求
長期間に渡り、無理な業務量をさせられたり、業務とは関係なく過酷な環境下で仕事をさせられる。
過小な要求
役割的に適当な仕事を与えられず、雑用など誰でもできるような業務に従事させられる。
個の侵害
必要以上にプライベートな内容を詮索したり、監視したり、口を出す。
介護職が受けるパワーハラスメントの具体例


「なるほど、上司や先輩からだけでなく、同僚や後輩からであってもパワハラになる場合があるんですね。知りませんでした」
「そうなんです。優越的関係を背景とした、というのは、職務上の立場が上であることだけを指すわけではないんですね。ですから、おっしゃる通り、部下から上司へのパワハラが起こることがあります。
さて、次に、介護現場で起こっているパワハラの具体例を見ていきましょう」

上司や先輩からの業務の範囲を超えた指導
- 大きな声で6〜7時間怒鳴られ続けた
- 「親の顔が見てみたい」と、指導に関係のないことを言われた
- お前の顔を見ているとイライラする。仕事ができないのが顔に出てる、と容姿などを中傷された
他の職員を巻き込んで、仲間はずれにされた
- A先輩に指導された通りに介護をしたら、B先輩に指摘を受けた。A先輩から教わりました、と返答したら、口答えしたことになり、それから他のスタッフも含めて全員に口を聞いてもらえなくなった。
- 他のスタッフには飲み会やイベント、祝い事の連絡がいくのに、自分だけ情報が入らないようになっている。
仕事を全然教えてもらえない
- 新人で就職したんですけど、先輩が全然仕事を教えてくれません。初任者研修で勉強してきたんでしょ?って言われて、施設で決まっている業務を教えてくれないんです。初任者研修で勉強できる内容じゃないのに。
- 何ヶ月も、雑用だけさせられた。資格を取っていったのに、介護職の業務をさせてもらえなかった。
パワハラへの対処方法


「私が受けた内容も入ってますね。やっぱりパワハラになるんだ。でも、対処方法ってありますか?解決できる気がしない・・・」
「とても悩んでらっしゃるでしょうね。パワハラはできることをやったら、すぐに相談するべきです。自分の心が壊れてしまう前に、適切な対処を実施しましょう」

パワハラの証拠を集める
職場でパワハラを受けたら、証拠を集めるようにしてください。
いつ、誰に、どんなことをされたのか、しっかりと記録しておきましょう。
あまりにもひどい場合は、音声を録音しておくのもいいでしょう。
記憶だけでは、した、してない、言った、言わないなど、水掛論になってしまいます。
そのようなことを避けるために、証拠がとても重要です。
上司や先輩、同僚、友人に相談する
もし、職場に相談できる上司や先輩、同僚がいるのであれば、相談するようにしてください。
上司からのパワハラであれば、さらにその上の上司に相談するなどしましょう。
上司に相談しにくいようであれば、先輩や同僚でもかまいません。
職場に相談できる相手がいないのであれば、友人でもいいです。
とにかく、自分で抱えこんでしまわないようにしてください。
人は精神的に追い詰められると、広い視野が持てなくなります、ネガティブな思考に陥ってしまいます。
それが続くと、心の健康を損なう恐れがあります。
心の健康を損なってしまうと、長期療養が必要になることもあります。
くれぐれも、メンタルヘルスを大切にしてください。
また 、相談することで、助言や協力が得られ、なにかしらの解決策が見つかる可能性があります。
たとえば、上司や先輩に相談すれば、直接の働きかけで改善されるかもしれません。
また、友人と話しをすることで、精神的に楽になったり、就職口が見つかって心に余裕ができる、ということもあります。
必ず相談するようにしてください。
施設の相談窓口などに相談する
事業所内には、ハラスメントに対する相談窓口が用意されているはずです。
令和3年度の介護保険の改正で、ハラスメント対策が義務付けられたからです。
その窓口を活用してください。
外部の相談窓口に相談する
事業所の相談窓口に相談しにくいような状況があれば、外部の相談窓口を利用するのもいいでしょう。
厚生労働省や、都道府県で、相談窓口が設置されています。
外部相談窓口
- ハラスメント悩み相談室(厚生労働省)
- 各都道府県労働局
【介護職】パワハラ上司や先輩に悩まされた場合の対処方法:まとめ

「ひとりで抱え込まずに相談することが大切なんですね。」
「そうですね。パワハラに限らず、ハラスメント全体に言えることです。相談窓口なども活用して、相談するようにしてくださいね」

この記事のまとめ
- パワハラには定義がある。
- 役職や経験値の上下関係だけではなく、能力によっても優越的な関係になる
- パワハラにあったら、ひとりで抱え込まずに相談すること
ということで、今回はこの辺で終わりにしたいと思います。最後まで読んでいただき、ありがとうございます。