介護の知識・技術

介護における自立と自律をわかりやすく解説します

2022年8月18日

スタッフ

「介護は自立支援をすることと学びました。で、介護の自立の中には、自律も含まれるって習ったんですけど、自立と自律ってどうちがうんですか?」

「介護の目的は自立支援ですが、「介護の自立支援」の中には、こんな生活がしたい、と自分で決める「自律」と、それを実践する「自立」の両方を指すんですね。違いを詳しく見ていきましょう」

施設長
こんな疑問を解決します

この記事の内容

介護における「自立」と「自律」の違いについて書いています

こんにちは、せいじです。介護業界に20年以上携わり、現在は初任者研修や実務者研修、介護福祉士筆記試験対策講座の講師をしています。

さて、介護の目的は自立支援ですが、自立支援には「自立」と「自律」の二つがあります。

そして、介護における自立支援とは、「自立」と「自律」の両方の意味が包括されています。

では、「自立」と「自律」それぞれの言葉はどんな意味になるでしょうか。

かんたんに言うと、「自立」とは、日常生活を自分でできるようになること、そして「自律」とは、どのような生活がしたいかを自分で決めること、という意味になります。

というわけで、今回は「自立」と「自律」について解説します。

介護における自立と自律をわかりやすく解説します

では、「自立」と「自律」の定義について見ていきましょう。両方を理解することで、介護の自立支援どういうことを指すのかが理解できるようになります。

自立の定義とは

自立の定義は以下のようになります。

自立の定義

  • 他からの支配を受けずに存在すること
  • 自己決定に基づいて質の高い生活を送ること
  • その人の存在自体に着目すること
スタッフ

「表現がむずかしすぎてなにも入ってこない・・・」

「定義になると小難しい表現が用いられることが多いですね。噛み砕いて説明しましょう」

施設長

「自立」とは、自分以外の人によって決められた人生を送るのではなく、自分で決めた人生、つまり自己決定した人生を自分自身で実践していくことを言います。

狭い意味で言うと、日常生活の「行為」が自分でできるようになる、ことです。

自律の定義とは

次に「自律」の定義です。

自律の定義

  • 他からの支配を受けずに自分自身の理解や価値観、社会規範に照らして行動するかどうかを自己決定すること
  • 心理的・精神的な側面に焦点をあてたもの

「自律」は、自己決定、つまり、自分がどんな生活がしたいかを自分で決めること、になります。

介護の自立支援とは「自立」と「自律」の支援

介護の現場では、身体的な自立がむずかしい人が少なくありません。老化によって身体の衰えが顕著であったり、改善が見込めない病気やケガの後遺症を持つ人が多くいるからです。

そんな人への介護では、「自立」よりも「自律」に重きが置かれることになるでしょう。そして、実践について、できるところは自分でしていただき、できないところを介助していくことになるわけです。

つまり、介護における自立支援では、「自立」と「自律」の両方が必要になります。。

自律支援に必要なこと

スタッフ

「でも、自律を支援するって、いったいなにをするんですか?どんな生活をしたいか、なんて、誰でも自分で考えられそうなものですけど・・・」

「健康な状態であればそうですね。でも、障害などを持っている利用者さんの立場になって考えてみると、必要な支援が見えてきます。ちょっと想像力を働かせて考えてみましょうか」

施設長

自分で自分の生活や行動などを決めることができるようにする「自律支援」ですが、なぜそのような支援が必要になるのでしょうか。

大人であれば、誰しも自分で決めることができそうですよね?

しかし、介護が必要になっている高齢者は、そうはいかないのです。なぜなら、自分だけで日常生活を完結することができないからです。

そして、人の手を借りないと生活できない状況になると、自分に自信が持てなくなったり、自分に価値を見出せなくなります

「自分はなんの役にも立たない」

「自分は生きている価値がない」

「家族に負担をかける存在」

「それなら生きていない方がよい」

こんな気持ちになっている人が、この先どんな生活がしたいか、なんて考えられません。

まずは、生きる意欲を取り戻すことが必要になります。

生きる意欲を取り戻してもらうためには、要介護者と介護職の間に信頼関係の構築が欠かせません

介護職は、関わりを通じて要介護者に「あなたには価値がある」「あなたには自分らしく生きる権利がある」「自分らしい生活を取り戻す支援をしていきますよ」ということを伝えていきます。

そして、要介護者と介護職の信頼関係が高まっていくことで、それが要介護者に伝わるのです。

「自分の価値を認めてくれる人がいるなら、そんな人が自分の生活を支援してくれるなら、もう一度自分らしく生きられるように頑張ってみよう」

そう思えてはじめて、自分の生活を自己決定していくことができるようになるわけです。

ですから、自律支援は非常に重要なんですね。

ちなみに、要介護者の意欲、能力を引き出す関わりを、エンパワメントと言います。

こちらも、介護において非常に重要な考え方になります。

詳細については、以下の記事をご覧ください。

【介護福祉士】エンパワメントとは?意味などをわかりやすく解説

こんな疑問を解決します こんにちは、せいじです。介護業界に20年以上携わり、現在は初任者研修や実務者研修、介護福祉士筆記試験対策講座などの講師をしています。 さて、介護において非常に重要な用語として、 ...

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介護における自立と自律をわかりやすく解説します:まとめ

スタッフ

「なるほど。自律支援の重要性がよくわかりました。自律支援なしに、自立支援の実現は成し得ないってことですね」

「そうですね。介護の自立支援には「自立」も「自律」も両方含まれていることを忘れないでください」

施設長

この記事のまとめ

  • 自立:実践
  • 自律:自己決定
  • 介護の自立支援:その人が求める生活(未来)を実現する支援

ということで、今回はこの辺で終わりにしたいと思います。最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

  • この記事を書いた人

せいじ

介護のやりがい・魅力、介護職の困りごと解決、その他介護を含む福祉に関することがらについて発信しています。【経歴】大学卒▶︎アパレル関係▶︎介護職▶︎ケアマネ▶︎施設長(老人ホーム)介護業界20年【現在】2019年独立/介護関連の講師・介護コンサルタント・居宅介護支援事業所運営

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