
「私たちは利用者に介護を提供する仕事ですが、現場では介護って言葉をほとんど使いません。食事介助、排泄介助、入浴介助のように、介助を違います。介護と介助の違いってなんですか?」
「ざっくり言うと、介護は、日常生活の自立を支援すること。介助は、そのための直接的な支援を指します。これだけではわかりにくい部分もあると思うので、今回は介護と介助の定義を詳しく見ていきましょう」

こんな疑問を解決します
この記事の内容
介護の定義と、介護と介助の違いについて書いています
介護の定義と、介護と介助の違いについて書いています
こんにちは、せいじです。介護業界に20年以上携わり、現在は初任者研修、実務者研修、介護福祉士筆記試験対策講座などの講師をしています。
さて、みなさん、介護の定義をご存じでしょうか?実はよくわからないまま「介護」をしていませんか?
私自身、介護職として働くようになっても、しばらくの間はよくわからないまま仕事をしていました。
また、業務上では、利用者に提供する支援は「介助」と呼ばれ、「介護」という言葉はほとんど使いません。
たとえば、「食事介護」ではなく、「食事介助」というんですよね。
私の中では、介護と介助の違いはなく、言葉のごろに合うように、介助とつけているのかな?程度の認識でした。
しかし、実際は、「介護」と「介助」の意味は異なります。
専門職である介護職は、その違いをしっかりと把握した上で、利用者にサービスを提供しなければなりません。
というわけで、今回は「介護」と「介助」の定義を明らかにし、その違いについて解説します。
介護の定義や介護と介助の違いとは?

では、介護、介助の定義とその違いについて見ていきましょう。
介護の定義
介護とは、日常生活において、利用者にできることは自分でしていただき、できないところを介護者が支援、その中で利用者に少しでも自分でできることを増やしていただけるようにすることです。
つまり、介護をひと言で表現すると「自立支援」になります。
日常生活を自分でできるようになっていただくようにすることが、介護の目的なんですね。
とはいえ、利用者の中には、病気や怪我、老化による身体的な衰え、身体を動かさないことによって起こる廃用症候群などによって、どう頑張っても身体を動かすことができず、日常生活をなにひとつ自分でできることがない、という方もいます。
いわゆる「寝たきり」の方です。
寝たきりの方に、日常生活少しでも自分でできるように支援しようといっても不可能です。
しかし、介護の定義が自立支援である以上、プロの介護職は自立支援をしなければなりません。
寝たきりの方に対する介護とは?
ここで自立支援をもう少し掘り下げると、自立支援には「自律」の意味も含まれます。
自律とは、かんたんにまとめると「自分で決める」、難しい表現を使うと「自己決定」という意味になります。利用者が自分で決められるように支援するということです。
では、なにを自分で決めてもらえるように支援するのでしょうか?
自立支援は、狭義の意味では「日常生活を自分でできるようになってもらう」ということになりますが、広い意味で、そして本来の意味で言うと「その人が求める生活(未来)を実現する支援」ということになります。
つまり、「自分が求める生活」を自分で決められるように支援することが、自律支援になるわけです。
介護が必要になった利用者は、自分の価値を見失ってしまいます。なぜなら、元気なときに担っていた社会的役割、また家族の中での役割を担えなくなるどころか、家族の重荷になる存在となるからです。
今後一生、誰かの手を借りないと生きていくことができない、そう考えると、生活に対する意欲を失ってしまいます。
「自分には生きている価値がない、早く死にたい」そんな絶望した気持ちになっている利用者は、この先どう生きたいか、なんて考えることができません。
介護職は、利用者とのかかわりの中で、利用者に「あなたには価値がある、あなたには自分らしく生きる権利がある、そして、介護職はあなたが自分らしく生きられるように支援していきますよ」と伝えていくのです。
「自分の価値を認めてくれる人がいるなら、そんな人がこれからも支えてくれるんだったら、もう一度自分らしく生きてみようかな」
かかわりの中で利用者の生活に対する意欲を引き出し、利用者が自分でこの先どんな生活がしたいかを決められるように支えていくんですね。
認知症の方に対する介護とは?
では、自分で「こんな生活がしたい」と言えない、考えることができない認知症の方に対してはどうでしょう。
認知症の方にも、介護はその人が求める生活を知って、それを実現する支援をしなければなりません。
なぜなら、介護の目的は自立支援だからです。
つまり、認知症の方であっても、介護職は利用者の「したい生活」を知って、それを実現する支援をするのです。
「したい生活」を知るには、利用者の生活史を知り、その人の価値観や生活習慣などを把握することが必要です。
過去、現在、未来は繋がっています。ですから、その人の生活史、つまり過去を知れば、この先の求める生活が見えてくる、ということになるわけです。
介助の定義
一方、介助を定義づけるとすると、どういったものになるでしょうか。
介助とは、自立支援をするための直接的な支援のひとつを指します。
日常生活において、利用者の「できること」「できないこと」を明確にし、「できること」はとことん自分でしていただき、「できないこと」を支援して、自立に向けて進んでいく際の直接的な支援を「介助」というわけです。
たとえば、自分で食事を口に運べても、食器を移動することができない人には、食器の移動の支援をします。自分で最後まで着替えができない人には、着替えの支援をしますよね。その支援が介助に当たるわけです。
介護と介助の違いとは
介護と介助の違いを整理すると、介護とは自立支援を目的とする利用者への関わり、そして、介助とは介護という目的を達成するための直接的な支援行為、になります。
つまり、介護があって介助があるわけですね。ここがとても重要になります。
というのも、介護という目的がおざなりになってしまって、介助だけが一人歩きしてしまうと、それは介護ではなく、ただの「お世話」をしていることになるからです。
お世話は誰にでもできることです。
介護職は介護のプロですから、誰でもできるようなお世話をしていては困ります。
プロとして、介護、つまり利用者の自立支援を目的として、日常生活の介助をしなければならない、ということです。
介護のプロにとって、介護と介助の違いが非常に重要であると言えるでしょう。
介護の定義や介護と介助の違いとは?:まとめ

「なるほど。介護が目的、そして介助が手段ということですね!」
「そうですね。目的がない手段というのはあり得ないので、まずは介護=自立支援の理解が必要です。そして、それを実現するために介助していくってことです」

この記事のまとめ
- 介護は自立支援
- 自立支援とは、その人が求める生活を実現すること
- 自立を実現するための日々の支援が介助
ということで、今回はこのへんで終わりにしたいと思います。最後まで読んでいただき、ありがとうございます。