
「認知症の症状には、中核症状とBPSDっていうのがありますよね。中核症状って、どのような症状を言うんですか?詳しく教えてください」
「これから、認知症の方がますます増えていくと言われています。介護の現場でも、認知症の方が増えているんですね。ですから、介護職をする上では、認知症の知識が欠かせません。今回は、そんな認知症の中核症状について詳しく見ていきましょうか。」

こんな疑問を解決します
この記事の内容
認知症の中核症状はなぜ発生するのか、そして具体的にどのような症状なのかについて書いています。
認知症の中核症状とはどういった症状なのか、そして具体的にどのような症状があるのかについて書いています
こんにちは、せいじです。
介護の仕事を20年以上しており、現在は介護の研修の講師やコンサルタントの仕事をしています。
さて、今や多くの方がかかり、そして誰もがなる可能性のある認知症ですが、その症状は中核症状と周辺症状(BPSD)に分けられることをご存知でしょうか。
介護職としては、正しく利用者さんの状態を把握するにあたって、症状の理解は絶対に必要な知識になります。
というわけで、今回は認知症の中核症状について解説します。
認知症の中核症状をわかりやすく解説します

では、認知症の中核症状について見ていきましょう。
中核症状とは?
認知症の中核症状とは、脳の器質的な変化によって起こる症状のことを言います。器質的な変化とは、認知症という病気によって脳自体が変化してしまうことです。
たとえば、認知症患者の約6割を占めるアルツハイマー型認知症では、脳全体が徐々に萎縮していきます。
その結果、脳の全体的な機能が損なわれ、様々な症状があらわれるのです。
中核症状は防げない
脳の器質的な変化によって起こる中核症状は、脳自体が変わってしまうため、症状を防ぐことはできません。
たとえば、記憶を司る部位に器質的な変化が見られた場合、記憶障害を防ぐことはできないということです。
ですから、記憶障害による物忘れに対して、どれだけ事実を伝えたとしても、そして、忘れていることをわからせようとしても意味がありません。
なぜなら、脳の機能が損なわれてしまっているからです。そして、損なわれた機能を取り戻すことは、もうできません。
なので、認知症の方と関わる際は、それを理解して支援する必要があるということになります。
中核症状の種類

ここからは、中核症状の種類について見ていきましょう。中核症状をまとめると、次のようになります。
認知症の中核症状
- 記憶障害
- 見当識障害
- 失語、失行、失認
- 計算力の低下
- 判断力の低下
- 実行機能障害
それぞれ掘り下げていきます。
記憶障害
記憶障害は、認知症の代表的な症状です。
記憶は、新しいことを覚える記銘力、覚えたことをとどめておく保持力、記憶したことを思い出す想起力の3つに分けられますが、認知症ではすべての力が低下していきます。
まず、新しいことが覚えられなくなり、症状が進行するにつれて徐々に昔のことも忘れていくようになります。
昔のこと、たとえば、子供時代のことなどを思い出せなくなってくるようだと、かなり症状が進行していることになります。
見当織障害
見当識とは、時間、場所を把握する力のことです。認知症になると、時間、場所を把握することができなくなり、このことを見当織障害と言います。
時間がわからないということは、今が昼なのか、夜なのか、そしてどの季節なのか、といったことがわからなくなります。
実際の社会生活においては、約束が守れなくなったり、出かけると家に帰れないといったことが起こります。
失語・失行・失認
失語、失行、失認とは、それぞれ身体は正常に機能するのに、脳の障害によって行動や認識ができなくなってしまう症状を言います。
それぞれ見ていきましょう。
失語
失語とは、話しをする器官である口の筋肉や舌、喉に問題がないにもかかわらず言葉が話せなくなったり、言葉の意味がわからなくなる症状です。脳の中枢が障害を受けることによって起こります。
認知症が進行して、言葉に関係する中枢が障害を受けることによってあらわれる症状です。
失行
失行とは、行為をする能力に問題がないのに、行為ができなくなる症状です。衣服の更衣や整容など、身体は正常に動くのにやり方がわからずにできなくなってしまいます。
失認
目は正常に見えているのに、見ているものが認識できないことを失認と言います。脳が認識できなくなることで起こります。
計算力の低下
認知症になると、初期の段階から計算力の低下が見られます。物を買うときにお金の計算ができないなど、数字に関するかんたんな問題でも混乱するようになります。
ですから、それを避けるために、小銭を使わなくなるなどの行動が見られるようになります。
認知症に気づくための初期症状として、おさえておくことは重要です。
判断力の低下
判断力が低下するのも、認知症の特徴的な症状です。記憶や見当織の低下とともに判断力も低下することで、日常生活に大きく支障が出ることになります。
実行機能障害
実行機能障害とは、計画立てて行動ができなくなる障害です。例えば、人間は行動するとき、次のように段取りを立てて行います。
実行機能
- ゴールを決める
- 計画を立てる
- 実施する
- 評価する
この機能が障害されると段取りが立てられなくなり、実際に行動することができなくなります。
認知症の中核症状をわかりやすく解説します:まとめ

「認知症っていう病気にどんな症状があるのかをしっかりと理解しておくことで、関わり方も変わってきますね!」
「その通りですね。また、認知症が進行しているかどうかも、症状を知らなければ気づくことができません。だから、認知症の症状を知っておくことは、認知症ケアでは欠かせないのです」

この記事のまとめ
- 認知症の中核症状とは、脳が認知症という病気で変化することによって起こる
- 記憶ができなくなる記憶障害、時間、場所などがわからなくなる見当識障害、行動ができなくなる失行などの症状がある
- 脳が変わってしまうことで起こるため、防ぐことができない
認知症には、中核症状の他にもうひとつ、BPSD(行動・心理症状)があります。中核症状が核になって起こることから、周辺症状とも呼ばれます。
認知症を理解するためには、両方の症状をおさえておく必要があります。
BPSDについては、次回の記事で書いていきます。
ということで、今回はこのへんで終わりにしたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。