
「介護職って給料が安いで有名ですよね。けっこう大変な仕事をしていると思うんですけど、どうしてなんですか?」
「介護職の給料は、たしかに一般の仕事と比較すると安くなっていますね。その理由は複数あります。また、安い給料を上げていく方法もあるんですよ。生きていく上でお金は欠かせません。少しでも上げたいですよね。今回は、理由と改善方法について見ていきましょう」

こんな悩みを解決します
この記事の内容
介護職の給料が安い理由と、改善方法について書いています
こんにちは、せいじです。介護の仕事を20年以上しており、介護職、施設・居宅のケアマネジャー、そして、介護老人保健施設の副施設長や介護付有料老人ホームの施設長などの管理職を経験しました。
さて、介護職と聞くと「給料が安い」というイメージがあると思います。実際に、介護職の給料は全産業の平均と比べると低くなっています。
人材が足りない業界で、しかもなり手が少ない上に負担の大きい仕事とされている中で、どうして給料が安いのでしょうか。
それには、専門性が低いと認識されている、介護保険制度に基づいて運営されている、人件費の占める割合が高い、といった理由があげられます。
というわけで、今回は介護職の給料が安い理由について解説します。
介護職の給料は本当に安いの?その実態は?
ところで、まずは介護職の給料が本当に安いのかどうかを確認しておきたいと思います。
参考資料として用いたのは、厚生労働省が出している「令和3年賃金構造基本統計調査」です。
この資料によると、次のような結果となっています。
職種 | 平均賃金 |
---|---|
一般労働者の平均賃金 | 30万7,400円 |
介護職員(医療・福祉施設等) | 23万9,800円 |
訪問介護従事者 | 24万5,800円 |
月給で見ると、一般の平均賃金よりも、6〜7万円ほど低くなっています。
年収では、月給だけの単純計算でいうと72〜84万円ほど変わってくることになります。
この数字で見ると、たしかに介護職は給料が安い、と言えます。
「やっぱり介護職の給料は安いんだ・・・」

介護職の給料が安い理由は?

では、介護職の給料が安い理由について見ていきましょう。給料が安い理由をまとめると、次のようになります。
介護職の給料が安い理由
- 専門性が低いという認識
- 介護保険制度に基づいた事業運営
- 人件費の占める割合が高い
それぞれ掘り下げていきます。
専門性が低いとう認識
介護職の給料が安い理由のひとつとしてあげられるのが、専門性が低い仕事と認識されていることです。
その理由をまとめると、以下のようになります。
専門性が低いとされる理由
- 介護は単なるお世話の仕事
- 専門職なのに資格がなくてもできる
- 資格を取得するハードルが低い
介護職は、介護を必要とする高齢者の介護をする専門職です。しかし、専門職としては、世間一般的に専門性の低い仕事と認識されています。
なぜなら、「単なるお世話」の仕事と思われているからです。
実際、介護の仕事は特別な資格がなくても始めることができますし、資格を取得するハードルも低いです。(ただし、2024年4月からは、無資格者は認知症介護基礎研修の取得が必須になります)
国家資格の介護福祉士でも、実務経験を3年積んで試験を合格すれば取得できます。(介護福祉士の受験資格の詳細については、介護福祉士の試験を受けるための実務経験ルートの詳細とは?をご覧ください)
しかも、試験の合格率は、現在では70%を越える数字となっています。
つまり、介護は誰でもできる仕事、と認識されているのです。
しかし、実際には介護は単なるお世話の仕事ではありません。
介護は、要介護高齢者の生活の自立を支援する仕事です。
自立支援をしていくためには、相応の専門性がないとできません。
この理解がされていないことが、介護職の給料が安い原因となっているのです。
介護保険制度に基づいた事業運営が求められる
介護保険制度に基づいて事業を運営しなければならない点も、介護職の給料が安い理由のひとつです。
なぜなら、企業努力によって利益を生み出そうにも限界があるからです。
介護保険制度では、サービスの報酬が国によって決められています。
また、サービスを提供するのに必要な人員の数も定められています。
ですから、売上げを上げつつコストを下げ、職員の給料に回すことが難しくなるのです。
また、介護保険制度では、3年に1回、介護報酬の見直しが行われます。
その際に、サービス形態ごとの運営状況によって、介護報酬が調整され、たくさん利益が出ているサービスの報酬は下げられるのです。
なので、一時的に売上が良くなっても、次の法改正で報酬が下がる可能性があるため、安易に介護職の給料を上げることができないのです。
人件費の占める割合が高い
介護の仕事は、コストの多くを人件費が占めます。
利用者の支援をするためには、必ず人員が必要になるからです。
つまり、利用者が増えれば増えるほど、その分、介護職の人件費も増えていくことになります。
他の業種のように、人件費をおさえてコストを削減する、というのが難しいのです。
たとえば、コンビニであれば、セルフレジなどを導入して人件費を削減しています。
ユニクロでも、服の入ったかごを置くだけで、金額が計算されるレジが導入されています。
機械やテクノロジーによって大幅に人件費を下げることにより、利益率を上げることができるわけです。
しかし、介護はそういうわけにはいきません。
ですから、利益率を高めることがむずかしく、結果として1人1人の給料を上げることができない、ということになるわけです。
とはいえ、最近は介護もテクノロジーの導入によって、人材が削減できるようにしよう、という動きが出てきます。
今後の動向次第では、この点に変化があるかもしれません。
介護職の収入を改善する方法


「介護職の給料が安い理由を見ていると、根本的な問題でどうしようもないように感じるんですけど、改善の余地はないんですかね・・・」
「ベースが低いというのは事実ですね。とはいえ、スキルアップしたり、ステップアップすることによって、給料を上げていく方法はあるんですよ。ここからは、給料を上げる方法について見ていきましょう」

介護職の給料を上げる方法
- 資格を取得する
- 夜勤をする(回数を増やす)
- 同じ職場で継続して働く
- 役職者を目指す
- 給料の高い職場へ転職する
- 副業をする
掘り下げていきます。
資格を取得する
王道の給料アップの方法としては、資格を取得する、ということがあげられます。資格を取得することで、資格手当がつくからです。
一般的に、介護の施設、事業所が手当を設定している資格としては、次のようなものがあります。
資格手当の付く資格
- 初任者研修
- 実務者研修
- 介護福祉士
- 介護支援専門員(ケアマネジャー)
- 社会福祉士
特に、1~3の介護職の資格については、介護職として働くにあたって、資格手当が支給される事業所がほとんどです。
ただし、初任者研修については、最低限の資格ということで、設定していないところもあります。
また、介護支援専門員はケアマネジャーとして、社会福祉士は相談員として仕事をしないと、資格手当がつかないという事業所もありますね。
そのいっぽうで、介護職であっても、4~5の資格を持っていることでプラスαの手当をつけているところも少なくありません。
有資格者がいるということは、事業所にとってそれだけありがたいことなわけです。
夜勤をする(回数を増やす)
基本的な給料と、資格手当以外で給料が上がるものとして、夜勤手当があります。夜勤がある事業所では、必ず3000円~8000円程度の夜勤手当が設定されているからです。
ですから、給料を増やしたいのであれば、夜勤をする、もしくは夜勤の回数を増やす、という方法があります。
ただし、夜勤を増やしたいと思っても、自分の思いのままに増やせるわけではありません。
1ヶ月に事業所で必要な夜勤の回数は決まっており、その中で何回の夜勤ができるかは、他の職員との兼ね合いで決まってくるからです。
仮に、自分が夜勤の回数を多くしてほしいと希望しても、他にも夜勤をたくさんしたいと思っている職員がいると、希望通りの回数はできませんよね。
つまり、自分ですべてコントロールできるわけではない、というデメリットがあります。
同じ職場で継続して働く
同じ職場で継続して働くことで、給料の改善が見込めます。長くなればなるほど昇給によって給料がアップするからです。
すぐに劇的にアップするわけではありませんが、昇給が定められている事業所であれば、毎年確実にアップしていくわけですから、将来的な予測として計算しやすい方法になります。
役職者を目指す
また、同じ職場で長く仕事を続けるメリットとして、役職者に昇進しやすい、といったことがあげられます。
長く続けているほうが、法人や施設からの信頼が得られやすいからです。
役職者になれば、当然役職手当が付きます。その分、給料もアップすることになるわけですね。
事業所によって役職手当の金額がちがうため一概には言えませんが、月給で万単位の金額で変わってきます。
仕事の量が増え、責任も増えますが、給料という面では改善が見込めます。
給料の高い職場への転職
同じ職場で長く続けても、先が思いやられるというのであれば、給料の高い職場へ転職するのもひとつです。
そのほうが、手っ取り早く給料が上がりますし、長く働き続けるにしても、給料の上がり幅が良いかもしれません。
また、役職者として採用してくれる職場を探すのもいいでしょう。
ただし、転職する場合は、給料に保持資格やこれまでの実績が影響してきます。
そして、それらを考慮して採用される場合、相応の期待を負う形になります。プレッシャーを感じる中での仕事になるかもしれません。
今の職場を変えるのか、それとも継続していくのかを考える判断材料にしましょう。
副業をする
本職の介護職で給料の改善がむずかしいと感じるのであれば、副業をしてみるというのもいいかもしれません。
そのほうが、短期間で改善が得られやすいからです。
最近は、副業OKにしている法人も増えてきています。休みの日を利用して、他の施設で夜勤の副業をしたり、まったく別の仕事をするのもいいでしょう。
インターネットを使って、YouTubeやブログといった方法があります。
とはいえ、YouTubeやブログを個人でやっても、収入になるにはけっこうな時間が必要になります。
もう少し短期的に稼げるようになりたいということであれば、画像編集や動画編集の技術を身につけて、編集の仕事をするのもひとつでしょうね。
ただ、こちらも、編集技術を高めて、仕事を受注しなければならないため、けっこうハードルは高めです。
介護職としての仕事で向いているものとして、人の悩み相談や介護相談がいいかもしれません。
「ココナラ」というサイトであれば、個人の困りごとを個人が解決してお金を稼ぐことができます。
もちろん、それなりの努力と技術が必要になってきますが、やってみる価値はあるでしょう。
介護職の給料が安い理由と収入を改善する方法とは:まとめ

「介護職でもやりようによっては給料を上げることができるということですね!あとは自分次第、頑張ります!」
「そうでうすね。どんな仕事でも、スキルアップやステップアップをしないと給料は上がっていきませんからね。ベースが低いとはいえ、介護職からでも、一般の平均年収以上を稼ぐことはできますよ。頑張ってください」

この記事のまとめ
- 介護職の給料が安いのは、専門性が低いという認識や、介護保険の制度の基づくサービス提供によって、利益を上げにくいから
- それでも、収入を改善する方法はある。資格取得や役職になるなどの、スキルアップ、ステップアップ。夜勤を増やしたり、転職、副業など
- ただ単に介護職をしているだけでは給料は上がらない。稼ぐ努力が必要
ということで、今回はこのへんで終わりにしたいと思います。最後まで読んでいただき、ありがとうございます。