
「介護福祉士試験って、筆記試験と実技試験の2つがあって、両方合格しないといけないって聞きました。でも、実技試験を受けた人は、私の周りにはいないんです。制度が変わって廃止されたんですか?」
「いえいえ、介護福祉士の実技試験は今でも実施されています。でも、実務経験ルートでは、実務者研修の修了が必須になってからは免除になっています。ですから、介護として働きながら取得する人に実技試験を受ける人はいないんですよ。それ故に廃止になったと思っている人も多いんです。でも、実際は他のルートの受験者に実施されてるんですよ」

こんな疑問を解決します
この記事の内容
介護福祉士の実技試験が免除される条件について書いています
こんにちは、せいじです。介護業界に20年以上携わり、現在は主に介護関連の研修の講師をしています。介護福祉士試験についても、複数の学校で筆記試験対策講座を担当しています。
さて、介護福祉士試験の概要を見ると、筆記試験の他に実技試験についての記載がされています。
しかし、これから介護福祉士を受験しようとする介護職で、実技試験を受験する人はいません。お目にかかることはありませんよね。
なぜなら、平成28年度(平成29年1月実施)の試験から実務経験ルートの受験者に実務者研修の修了が必須となり、実技試験が免除されることになったからです。
ですから、介護の仕事をしながら介護福祉士を受験する人には、実技試験がないのです。
ただし、他のルートでは実技試験が実施されています。
というわけで、今回は実技試験が免除される条件について解説します。
介護福祉士を取得するためのルート

まずは、介護福祉士の受験資格が得られるルートについて整理しておきましょう。
介護福祉士試験の受験資格が得られるルートとしては、次の4つがあります。
介護福祉士取得ルート
- 養成施設ルート:介護福祉士の専門学校などに通うことで取得
- 実務経験ルート:介護職として実務を経験することで取得
- 福祉系高校ルート:福祉系の高校に通うことで取得
- 経済連携協定(EPA)ルート:EPAで来日している外国人の取得ルート
このうち、養成施設ルート、実務経験ルート以外のルートでは、筆記試験と実技試験の受験が必要になります。
ただし、免除条件が設定され、条件を満たすことによって実技試験が免除されます。
次の章で詳しく見ていきたいと思います。
各ルートでの実技試験の有無と免除の条件について


「たしかに私は介護職として働きながら受験する実務経験ルートなので、周囲に受験者がいないのも当然ですね。他のルートでは行われてたんですねぇ。知らなかった。他のルートでは実技試験が必須なんですか?」
「いえ、他のルートでも実技試験が最初から免除されているルートや、免除される条件が設定されています。ルートごとにあらためて説明していきますね」

養成施設ルートと実技試験
養成施設ルートは、介護福祉士養成施設(専門学校)を卒業することで介護福祉士の受験資格が取得できます。
受験資格を取得するためには、高校卒業の方は2年以上、福祉系の大学や社会福祉士、保育士の養成施設を卒業した人は1年以上の期間、介護福祉士養成施設で勉強することが必要になります。
以前までは、卒業することで介護福祉士資格を取得することができましたが、平成29年度(平成30年1月)の試験からは受験資格に変更となっています。
つまり、養成施設を卒業しても、介護福祉士試験に合格しなければ取得することができなくなったのです。
ただし、令和8年度末の卒業者までは、卒業後5年間は、国家試験に合格しなくても介護福祉士になることができます。
5年経過後については、次の条件で介護福祉士を取得することができます。
5年経過後も資格を維持するには
- 卒業後5年間続けて介護等の業務に従事する
- 卒業後5年の間に介護福祉士試験に合格する
ただし、令和9年度以降に養成施設を卒業する方からは、国家試験に合格しなければ介護福祉士になることはできません。
卒業後の5年間は、試験を受けなくても介護福祉士になれたのが、令和9年度以降は合格しないと取得できなくなったということです。
ただし、実技試験については、養成施設ルートは免除となっています。
実務経験ルートと実技試験
介護職として実務経験を積み、実務者研修を修了することで受験資格が得られるルートです。
詳細は次のとおりです。
実務経験での取得要件
- 従業期間3年(1095日)以上(休職期間を含む)
- 従業日数540日以上
- 実務者研修修了
平成28年度試験で実務者研修修了が必須になる前は、実務者研修を修了することで実技試験が免除になっていました。
必須になってからも実技試験が免除されることは変わっていません。
ですから、現在の実務経験ルートでは、全員実技試験が免除されることになります。
福祉系高校ルートと実技試験
福祉系高校ルートとは、福祉系の高校や中学校に通い、必要な単位を習得することで受験資格が得られるルートです。
平成21年以降の入学者については、卒業することで筆記試験の受験資格が得られ、実技試験も免除となります。
平成20年度以前の入学者は、卒業することで筆記試験の受験資格が得られますが、実技試験の受験も必要になります。
また、特例高校等を卒業した人が介護福祉士の受験資格を得るには、卒業後に9ヶ月以上の介護等の実務経験を積む必要があります。そして、この場合も実技試験を受験する必要があります。
平成20年度以前の入学者、特例高校等に共通する実技試験の免除条件は、次のようになっています。
実技試験免除の条件
- 介護技術講習の修了
- 介護過程の修了
- 介護過程IIIの修了
いずれの研修を修了した場合も、実技試験が免除されるのは、修了後に引き続いて行われる3回まで、となっています。
つまり、修了後3回以内に筆記試験に合格しないと、実技試験の免除がなくなってしまうということになります。
経済連携協定(EPA)ルートと実技試験
経済連携協定(EPA)ルートとは、国と国が協定を結び、介護福祉士になるために就労している外国人(インドネシア人、フィリピン人、ベトナム人)のルートです。
実務経験3年以上で介護福祉士の受験資格が取得できます。実務経験ルートのように、実務者研修は必須となっていません。それ故、実技試験の受験も必要になります。
実技試験の免除については、福祉系高校ルートの免除条件に加えて、実務者研修の修了となっています。l
つまり、EPAルートの場合の実務者研修は、実技試験免除の条件となっているんですね。
介護福祉士試験の実技試験が免除になる条件とは?:まとめ

「なるほど、ルートごとにちがいがあるんですね。勉強になりました!」
「はい。ですから今でも実技試験はきちんと存在しているんです。まぁ、依然と比べると受験しないといけない人はかなり限られていますけどね。ちなみに、私は実務経験ルートで取得しましたが、実技試験も受けました。とても緊張したのが思い出として残っていますね」

この記事のまとめ
- 介護福祉士の実技試験は今も存在している
- 実務経験ルートでは、平成28年度から実務者研修の修了が必須となったため、実技試験は免除となる
- その他のルートでも、実技試験免除の条件が設定されている
ということで、今回はこの辺で終わりにしたいと思います。最後まで読んでいただき、ありがとうございます。