介護の知識・技術

障害の医学モデルと社会モデルの違いとは?

スタッフ

「ICFモデルの中で、障がい者の障害の捉え方において医学モデルと社会モデルがあるって知りました。捉え方の違いを詳しく教えてほしいです」

「ICFモデルでは、医学モデル、社会モデルの両方から障がい者を捉えていく考え方になっていますね。では、医学モデルと社会モデルについて詳しく見ていきましょう」

施設長
こんな疑問を解決します

この記事の内容

障がい者の障害について、医学モデルと社会モデルの捉え方の詳細や違いについて書いています

こんにちは、せいじです。介護業界に20年以上携わり、現在は介護の講師として初任者研修や実務者研修、また、介護福祉士の筆記試験対策講座などを担当しています。

さて、アセスメントで用いるICFモデルの中で、障がい者の障害の捉え方として医学モデル、社会モデルが出てきます。

それぞれの特徴をかんたんにまとめると、次のようになります。

医学、社会モデルの捉え方

  • 医学モデル:生活に支障があるのは、障害があるから。
  • 社会モデル:生活に支障があるのは、障害があっても当たり前に生活できる社会、環境などになっていないから

医学モデル、社会モデル両側面から障がい者を捉えることによって、解決すべき課題をあきらかにし、解決することができます。

本記事では、それぞれのモデルの捉え方について紹介し、その中で違いについてあきらかにしていきます。

というわけで、今回は障害の捉え方である医学モデルと社会モデルについて解説します。

医学モデルとは?

では、先に医学モデルから見ていきましょう。

医学モデルでは問題は人に起因する

医学モデルでは、障害のある人が生活に支障を感じるのは、その人に障害があるから、という捉え方になります。

つまり、問題は本人に起因するという考え方です。

たとえば、右半身が麻痺している右利きの人において、食事が食べづらいという問題がある場合、食べづらいのは右半身が麻痺しているからと考えます。

問題の解消には医療的な対策が必要

そして、医学モデルにおいては、問題を解消するのに必要なのは医療的な治療やリハビリ、となります。

先ほどの、右麻痺の人が食事が食べづらい問題については、右手がしっかりと動くようにリハビリを実施して機能を回復させましょう、となるわけです。

まとめると、医学モデルでは、問題は本人が障害を持っていることで起こり、解消するためには医学的な治療やリハビリが必要、という考え方です。

社会モデルとは?

スタッフ

「なるほど、医学モデルの捉え方はわかりました。医学モデルの通り、障害を持つ人にリハビリは欠かせない印象があります」

「そうですね。機能を回復していくことはとても大切です。でも、回復には限界がある人もいますよね。ですから、もう一方の社会モデルも重要なんです。見ていきましょう」

施設長

社会モデルでは問題は環境に起因する

社会モデルでは、障害のある人が生活に支障が出るのは障害があるからではなく、障害があっても当たり前に生活できる社会、環境になっていないから、と捉えます。

つまり、問題は本人にあるのではなく、社会、環境にあるという考え方です。

医学モデルと同様に、右半身麻痺の人の食事を例に考えてみましょう。

右半身麻痺の人が食事が食べづらいのは、食べやすいような環境になっていないからとなります。

問題の解消には環境による対策が必要

ですから、社会モデルでは、問題を解消するには環境を改善する必要がある、と考えます。

右麻痺で食事が食べにくいのであれば、障害があっても食べやすいように自助具、たとえば介助箸や、柄が太くて持ちやすくなっている介助スプーンなどを使用して解決する、となります。

介護者による食事介助もひとつの解決策ですね。

まとめると、社会モデルでは、問題は障害があっても生活しやすいようになっていない環境であり、問題を解消するには環境の改善が必要、という考え方です。

医学モデル・社会モデル両方から捉える

要介護高齢者を含む障がい者が抱える問題を解決していくためには、医学モデル、社会モデル両方から問題を捉えていく必要があります。

そして、それぞれ課題をあきらかにし、解決していくことで、当たり前の生活を取り戻せるようにするんですね。

介護職は、医学モデルでの問題については、医療との連携に努め、病気や怪我、後遺症の改善の支援をしていきます。

社会モデルについては、まさに介護職の能力の良し悪しが問われるところになるかもしれません。

問題が解決できるように、環境づくりなどに試行錯誤し、実践していくことが求められます。

介護の現場では、医学モデル、社会モデルを両輪として、生活の改善に向けていかなければならないということです。

医学モデル社会モデル
障害の捉え方身体疾患や身体の変調によって起こる社会・環境によって起こる
社会適法の手段治療・リハビリテーション社会・環境の改善
医学モデルと社会モデル 考え方の対比

障害の医学モデルと社会モデルの違いとは?:まとめ

スタッフ

「医学モデルで障がい者の方の身体の改善、回復を、そして社会モデルで環境の改善を、そして2つの問題を解決することによって、障がい者の方が当たり前の生活ができるようにしていこうってことなんですね」

「そういうことですね。どちらの方が重要ということではなく、両方の側面から捉え、問題を解決する必要があるということです」

施設長

この記事のまとめ

  • 医学モデルは病気、疾患が障害の原因、対策は治療やリハビリ
  • 社会モデルは、社会、環境が障害の原因、対策は、社会、環境の改善
  • 両方から障がい者の問題を捉え、解決していく必要がある

ということで、今回はこの辺で終わりにしたいと思います。最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

  • この記事を書いた人

せいじ

介護のやりがい・魅力、介護職の困りごと解決、その他介護を含む福祉に関することがらについて発信しています。【経歴】大学卒▶︎アパレル関係▶︎介護職▶︎ケアマネ▶︎施設長(老人ホーム)介護業界20年【現在】2019年独立/介護関連の講師・介護コンサルタント・居宅介護支援事業所運営

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