介護の知識・技術

食事介助中の声かけはNG?誤嚥のリスクになる?

スタッフ

「食事介助をしている際に、声かけはしない方がいいんですか?この前、話しかけたらむせちゃって・・・。黙って食事に集中してもらうことがいいんですかね?」

「いえいえ、そんなことはありません。食事介助中の声かけは、食事を豊かにしてくれる要素のひとつです。黙々と食べるのは味気ないでしょう。ただし、適切なタイミングで声をかけなければなりません。

では、今回は食事介助中の声かけについて見ていきましょうか」

施設長
こんな悩みを解決します

この記事の内容

食事介助中の適切な声かけ、声かけしていいタイミング、避けた方がいいタイミングについて書いています。

こんにちは、せいじです。介護業界に20年以上携わり、現在は介護の資格研修の講師や、介護コンサルタントをしています。現場で介護の技術指導も行なっています。

さて、ときどき現役の介護職の方から「食事介助の際に声かけをすると、誤嚥のリスクになる。だから、食事中は声かけをしてはいけない、と指導を受けたのですが、ダメなんですか?」との相談を受けます。

でも、私たちにとって、食事中の会話は楽しみのひとつですよね。だからこそ、気の知れた仲間との食事は、とても楽しいものになります。

逆に、食事中、ずっと黙ったまんまっていうのは、なんとも寂しい風景です。

その一方で、たしかに食事中に話しをすることで、誤嚥のリスクは高まりそうです。話しをしていたら、誤って飲食物が気道に入ってしまった、なんて経験がある人もいるでしょう。

結論を言うと、食事中の会話は、食事を豊かにするための要素となりますが、声かけをするタイミングをまちがえると誤嚥のリスクになる、ということになります。

というわけで、今回は食事介助中の声かけについて解説します。

食事の邪魔、誤嚥リスクを高める不適切な声かけ

まずは、食事の邪魔になったり、誤嚥のリスクを高めるような声かけについて見ていきましょう。

楽しい会話も、タイミングをまちがえると、ただの迷惑になります。

口の中に入れるタイミング

利用者の口の中に入れるタイミングで、返事をしないといけないような声かけは適切ではありません。

口に入れるタイミングでは、返事ができないからです。

利用者(介護される人)は返事を優先し、食事を口に入れるタイミングを失ってしまいます。

もし声をかけるのであれば、返事をしなくてよい声かけにしましょう。

たとえば、「じゃあ、おかゆ食べましょうか」と、今からなにを口に入れるのかを伝えながら、であれば、特に問題にならないでしょう。

嚥下するタイミング

食べ物を咀嚼し、飲み込むタイミングでの声かけも避けた方がいいですね。

声かけに反応しようとすることで、誤嚥のリスクになるからです。

声をかけるのであれば、嚥下のタイミングは絶対に避けるようにしてください。

適切な声かけの方法やタイミング

スタッフ

「なるほど。会話はいいけれど、食事の邪魔になったり、むせを起こすようなタイミングは避けなければならないってことですね」

「そうですね。私たちでも、ずっと話されっぱなしだと、いつ口に運んでいいのか困ってしまいますよね。また、飲み込みの最中に声をかけられて、むせてしまった経験がある人もいるのでは?利用者さんも同じってことです。では、次に、どんなタイミングならいいかを見ていきましょう」

施設長

食べ物が口の中に入っていないタイミング

利用者に声をかけるタイミングは、利用者の口の中に食べ物が入っていないときです。

たとえば、食事の前や、嚥下して次の食べ物を口の中に入れるまで、ですね。

口の中に食べ物が入っていなければ、声をかけても誤嚥をすることはありませんからね。

口の中に入れたら観察する

利用者の口の中に食べ物が入っている間は、利用者を観察するようにしてください。

観察するポイントとしては、次のようなことがあげられます。

食事中の観察ポイント

  • 利用者の表情
  • 口の動き
  • 喉の動き

表情を見ながら、おいしそうかどうか、食べにくそうではないか、といった非言語の情報を収集します。

そして、きちんと咀嚼できているか、口の動きも確認しましょう。

飲み込んだかどうかは、喉仏の上下の動きで確認することができます。

表情の変化があったときに声かけ

観察をしていて、利用者に変化があった場合は、声かけをしましょう。

食べにくそうとか、苦しそうとか、そのような状況が見て取れたら、クローズドクエスチョンでの声かけにより、状況を把握してください。

クローズドクエスチョンとは、「はい・いいえ」で答えられる質問です。

たとえば「おいしいですか?」といった問いかけですね。

口の中に食べ物が入っていても、頷きや首振りで返答できます。

逆に「はい・いいえ」で答えられない質問を、オープンクエスチョンと言います。

「お味はどうですか?」といった質問です。オープンクエスチョンは、口の中に食べ物が入っている場合は適しません。

うまく使い分けるようにしてください。

食事介助中の声かけはNG?誤嚥のリスクになる?:まとめ

スタッフ

「食事中の会話って楽しいですものね。適切なタイミングを見計らって、上手に声かけしたいと思います。」

「そうですね。ぜひ、食事が豊かになるような声かけをして差し上げてください!なお、正しい食事介助の方法出あったり、食事介助の注意点などについては、下記の記事をご覧ください」

施設長
正しい食事介助の方法、基本や注意点などを解説します

こんな疑問を解決します こんにちは、せいじです。介護業界に20年以上従事し、現在は初任者研修や実務者研修の講師をしています。また、現場での技術指導も行なっています。 さて、介護の中でも重要なものとして ...

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この記事のまとめ

  • 食事中の会話は、食事を豊かにする
  • ただし、不適切なタイミングや形の声かけは、食事の邪魔になったり誤嚥のリスクになる
  • 適切なタイミングで、適切な声かけをすることで、利用者の食事を充実させることができる。

ということで、今回はこの辺で終わりにしたいと思います。最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

  • この記事を書いた人

せいじ

介護のやりがい・魅力、介護職の困りごと解決、その他介護を含む福祉に関することがらについて発信しています。【経歴】大学卒▶︎アパレル関係▶︎介護職▶︎ケアマネ▶︎施設長(老人ホーム)介護業界20年【現在】2019年独立/介護関連の講師・介護コンサルタント・居宅介護支援事業所運営

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