
「介護職って、退職者が多いイメージがありますよね。介護職はしんどいよ、ってよく聞くんですけど、辞める理由ってどんなものがあるんですか?」
「介護職の退職理由は、長年「人間関係に問題があった」がトップになっています。人間関係がしんどくなって辞めていく人が多いんですよ。今回はそれ以外の理由もあわせて見ていきましょう」

こんな疑問を解決します
この記事の内容
介護職が仕事を辞める理由について書いています
こんにちは、せいじです。
介護業界に20年以上携わり、現在は人材定着やチームワーク向上に関する研修の講師やコンサルタントとして活動しています。
さて、介護職は「退職者が多い」と言われます。
どんなことが理由で辞めて行くのでしょうか?
厚生労働省が行った、令和2年度介護労働実態調査では、次のような結果になっています。
順位 | 理由 | 割合 |
---|---|---|
1 | 職場の人間関係に問題があったため | 23.9% |
2 | 結婚・妊娠・出産・育児のため | 19.8% |
3 | 法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため | 17.2% |
4 | 他に良い仕事・職場があったため | 16.8% |
5 | 収入が少なかったため | 15.6% |
「職場の人間関係に問題があったため」が退職理由のトップになっています。
というわけで、今回は、介護労働実態調査や実際の現場を見てきた経験から、介護職が退職する理由について、解説していきます。
実際に、どんなところがしんどいのでしょうか。そして、どんな理由で辞めてしまうのでしょうか、
介護職を辞めたい理由とは?

では、介護職がしんどい、辞めたいと思う理由について見ていきましょう。まとめると、次のようになります。
介護職を辞めたい理由
- 人間関係が悪い
- 結婚、妊娠、出産、育児
- イメージとのギャップが大きすぎた
- 残業や急な出勤が多い
- 労働環境が悪い
- 身体的、精神的な負担が大きい
- 給料が少ない
厚生労働省の調査と照らし合わせると、3〜6が「法人、施設への不満」「他に良い仕事、職場があった」に該当してきます。
それぞれ、掘り下げて見ていきましょう。
人間関係が悪い
介護職の退職理由は、人間関係の問題がずっと1位になっています。職場の人間関係が悪いことが、しんどい理由、辞めたくなる理由なんですね。
介護の仕事は、どうして人間関係の問題が起こりやすいのでしょうか。
原因としては、次のようなことがあげられます。
人間関係が悪くなる理由
- 転職して介護職になる人が多い
- 年齢と経験値が比例しない
- 明確な評価が難しい仕事
介護職は、新卒で就く人が少ない仕事です。つまり、他の仕事からの転職組が多いんですね。
転職組が多いということは、それまでに培った仕事に対する考え方、価値観がちがうため、トラブルが起こりやすくなります。
転職組が多いことは、組織構造にも影響を及ぼします。
若いから経験が浅い、年齢を重ねているから経験が長い、とはなりません。
年齢はずっと下でも、介護経験では先輩、という逆転現象が起こってしまいます。
ですから、20代の若い上司から、30代以上の年長者が指導を受ける、という状況が起こりやすいのです。
しかも、前職では管理職をしていた、といった転職者もいます。
今まで指導していたような年代から、自身が指導を受ける立場になることが受け入れられず、人間関係が悪化してしまいやすくなります。
また、介護の仕事は、なにが正解かといった評価基準を明確にするのがむずかしい仕事です。数字などで客観的な優劣が明確にならないからです。
なので、評価に対して不満が発生しやすく、評価者との関係がこじれやすくなります。
人間関係に悩んでしんどくなり、辞めたい、とならないための対策としては、相談できる人を職場に作ることです。上司や先輩、同僚の中で、相談できる人が持てると、精神的にとても楽になりますし、トラブルの解決の糸口も見えてきます。
そして、相談する中で、相手が悪いばかりではなく、自分にも改善できる点がないか考える、ことが解決につながります。
とはいえ、どうがんばっても解決できないようであれば、転職を考えるのも解決策のひとつです。
結婚、妊娠、出産、育児
結婚や妊娠、出産、育児といった、ライフイベントによる退職が2位となっています。
結婚して、職場から遠方に引っ越したり、しばらく育児に専念するなど、致し方ない理由になります。
とはいえ、産休や育休が取りにくい、という職場環境も影響している可能性があります。
マタニティハラスメントが起こらないような職場づくりが必要となります。
イメージとのギャップが大きすぎた
理想と現実の差にショックを受けて、しんどい、辞めたいと感じる人もいます。
介護の現場はとても忙しく、利用者とゆっくりお話しをしている時間がなかなか持てなかったりするからです。
特に、業務中心の昔ながらの介護を実施している事業所や、極端な人手不足になっているところは、初任者研修などで勉強し、思い描いてきた介護とはかけ離れているかもしれません。
その現実を目の当たりにして、心が折れてしまうのです。
対策としては、忙しい中で、いかに介護の専門性を発揮できるかを考えてみてください。
忙しいからといって、利用者に粗末な接し方しかできないかというと、そうではないはずです。
心がけ次第で丁寧に接することはできますし、時間がない中でもコミュニケーションをはかる場面を作ることはできます。
たとえば、着替えの介助や入浴介助など、介助中に世間話や身の上話しを聞くといったことです。
そうやって、思い描いているイメージに実際の介護を近づけていくことが大切です。
また、小規模の事業所や、施設の方が、利用者とのコミュニケーションは取りやすいですね。
なので、そのような事業所などに転職するといいでしょう。
残業や急な出勤が多い
介護職は、急な残業や出勤が発生しやすい仕事です。
特に、感染症が流行する季節には多くなります。
急な欠員が出るケースが多いからですね。
たとえば、一般の仕事であれば、少々熱があっても出勤できるかもしれません。
しかし、介護の仕事では、感染症による熱の場合、利用者にうつしてしまう恐れがあります。
抵抗力の弱っている利用者は、感染しやすいですし、感染によって亡くなるリスクも高くなります。
ですから、介護職の体調不良には非常にシビアに対応する必要があるんですね。
ちょっとした体調の変化であっても、自宅待機や受診による検査を受けることが必要です。
介護職が休むと、当然シフトに穴が開くことになるため、代わりの介護職が必要になります。
ですから、本来休みであった介護職が急遽出勤したり、出勤している介護職が残業をして穴を埋めることが多くなるのです。
急な残業や出勤は、精神的にも身体的にも負担を感じますよね。
それがしんどくて辞めてしまうケースも少なくないんですね。
こちらについては、なかなか対策がむずかしいですね。
ですから、介護業界以外の仕事を探すのも、解決策のひとつとなります。
労働環境が悪い(ブラック企業)
労働環境が悪いために、辞めていくケースもあります。
俗にいうブラック企業ですね。
ブラック企業の特徴をまとめると、次のようになります。
ブラック企業の特徴
- サービス残業を強要される
- 休憩時間が規定通りに取れない
- 有給休暇が取れずに消えていく
- 制度に対する違反行為を強要される
- 利用者への虐待が放置されている
- 上司や先輩からのパワハラ、セクハラ
これらの内容が当てはまるような職場は、即刻退職した方がいいでしょう。なぜなら、改善される可能性は非常に低いからです。
その職場は、あなたが入る前から長年ブラックな環境だったわけで、あなたが改善を訴えたところで、現実に改善されることはほぼありません。
はっきり言って時間の無駄にしかならないので、他の職場を探すことをお勧めします。
身体的、精神的な負担が大きい
介護の仕事がしんどい理由のひとつとして、身体的、精神的な負担が大きい仕事ということがあげられます。
特に、重度者の多い施設である特別養護老人ホームでは、利用者を抱えたり、持ち上げたりする場面が少なくありません。
施設が広いため移動距離も長く、疲れやすいということもあります。
また、自分主体ではなく、利用者主体で仕事をしないといけないため、精神的な負担も大きくなります。
人に合わせるのって、かなり精神力を消費しますものね。
ですから、心身ともに負担が大きく、そのしんどさから辞めたくなるんですね。
重度の利用者への対応で負担を感じるのであれば、軽度者、つまり比較的お元気な方がたくさん利用されているサービス、事業所に転職をするのがいいでしょう。
たとえば、サービス付き高齢者専用住宅などは、比較的お元気な方が多く、介護職の身体的、精神的負担も少ないです。
その分、給料が少なくなるかもしれませんが、続けていくためにはどちらを優先するか考えて、選択してください。
給料が少ない

介護職は給料が安い、と言われます。実際に、一般の仕事と比較しても、給与水準が低いんですね。
正社員で働いても、手取りで20万円を切ってしまうという職場も少なくないでしょう。
1ヶ月頑張って働いて、給与明細を見てがっかりする、なんて日々はつらいですよね。
心身共に負担が多い仕事なのに、給料が低いと心が萎えてしまいます。
ただ、介護の仕事は、サービス形態によって給料が異なります。
たとえば、夜勤のないデイサービスよりも、夜勤のある入所系サービスの方が給料が高くなりますし、グループホームよりも、利用者の数が多い特別養護老人ホームなどの方が給料が高くなります。
そして、確実に給料をあげていくのであれば、資格の取得も大きなポイントです。
資格手当を設けている事業所が多いからです。
国家資格である介護福祉士や、介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を取得することで、資格手当がついたり、アップします。
もし、資格手当がない事業所なのであれば、資格手当のある事業所に転職するのも一つでしょう。
他にも、役職者になることで給料は上がります。
資格と連動しているとろこも多いですが、自分のスキルアップによって事業所の中でステップアップし、給料をあげていきましょう。
なお、介護職の給料が少ない理由と、給料を改善するための方法については、下記の記事に詳細を書いています。
ぜひ参考にしていただけたらと思います。
-
介護職の給料が安い理由と収入を改善する方法とは
こんな悩みを解決します こんにちは、せいじです。介護の仕事を20年以上しており、介護職、施設・居宅のケアマネジャー、そして、介護老人保健施設の副施設長や介護付有料老人ホームの施設長などの管理職を経験し ...
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介護職がしんどい、辞めたい理由7選:まとめ

「なるほど。理由はあれど、解決の余地があるものも少なくないですね。これなら、介護の仕事を続けていけるかも」
「そうですね。実際に、介護職の退職率は年々改善されてきているんですよ。企業の改善努力に加えて、個人でもできることに目を向けて、介護の仕事を続けてもらえたらと思いますね。」

この記事のまとめ
- 人間関係が悪い
- 結婚、妊娠、出産、育児
- イメージとのギャップが大きすぎた
- 残業や急な出勤が多い
- 労働環境が悪い
- 身体的、精神的な負担が大きい
- 給料が少ない
ということで、今回はこのへんで終わりにしたいと思います。最後まで読んでいただき、ありがとうございます。